八ヶフ岳フレッシュマン・セミナー

渕野 昌 (Sakaé Fuchino)

毎年行われている八ヶ岳フレッシュマン・セミナーの2007年の合宿で,数理論理学/数学基礎論の枠の講師をつとめることになりました.

私の担当のセミナーでは,無限組合せ論(古典的な集合論の中の一分野)に関する話題をとりあげようと思っています. 私のセミナーの参考資料や関連するノートなどを,このページに順次リンクする予定です.セミナーに参加を希望する人はチェックしてください. 以下に私のセミナーの紹介文を添付します.


講師: 渕野 昌(中部大学 工学部・教授)

テーマ: 無限組合せ論 --- エルデシュ=角谷の定理とその応用を例として

教科書: 
ゲーデルと20世紀の論理学(ロジック)第4巻 集合論とプラトニズム,第I部,
東京大学出版会 (2007).

概要

集合論の研究方向を大きく分類すると,数理論理学の手法を駆使して 集合の理論の体系自身やその内部現象をさぐる,「純粋集合論」(ただしこういう 名称が確立しているわけではない)とでも呼べるものと, 通常の数学研究の対象の陰にひそむ無限の発現を研究する「応用集合論」 (これもここで苦しまぎれに捏造した造語にすぎない)に分類することができると 言えるでしょう.

前者に分類されるものには,内部モデルの理論,巨大基数の理論などがあり, 後者には,無限組合せ論,実数の集合論とよばれる研究分野などがあります. これらの分野の研究は20世紀の70年代くらいまでは,かなり独立に行われていたと 言えます.しかし,近年の集合論の研究では,この2つの潮流は合流してスケールの 大きな流れを作りはじめています.

上で述べた集合論の2つの方向のうち,前者は数理論理学の深い理解を必要とする こともあり,予備知識なしで臨んだ場合,数日のセミナーの日程で面白い結果に 関する話題まで進むことは殆ど不可能と思われます.これに対して,後者では, 超限帰納法や,集合論の体系の外にあるいくつかの公理(無限組合せ論的原理) などの準備をすることで,比較的短時間で 面白い数学的結果の例にたどりつくことができそうです.

本セミナーでは,ここ述べた2番目の方向の流れに属す話題といえる, ゼロを除く実数の全体の可算個のハメル基底による被覆の存在が 連続体仮説と同値であることを主張する,Erdös=角谷の定理とその応用の 証明を目標とし,ここで必要となる道具立ての準備を通じて, 無限組合せ論の基礎を学んでいただきたいと思っています.

なおこのセミナーに関連する downloadable なファイルや副教材などへのリンクなどを

http://math.cs.kitami-it.ac.jp/~fuchino/tmp/yatsugatake07.html

に置く予定ですので,参加を希望する人はチェックしてください.
  
Last modified: Sun Jul 29 20:11:46 +0900 2007