(1) 1変数関数の微分
(1.1)実数の基本性質
この節と次の節の内容は完全に理解することを要求はしない。
しかし,微積分を理論的に支えている基礎に
「実数論・極限論」があることは理解しておいてほしい。
$0.999999999999999999\cdots=1$
という例などでも分かるように
実数をきちんと捉えることは難しい。
どこかに「無限」というものが顔を出す。
実数の概念が「数学的に」明確になったのは
(古代ギリシアは除いて) 19世紀の半ば以降のことである。
$0.999999999999999999\cdots=1$ に関して考えよう。
$$1\div 3=0.\dot{3}=0.333333333333333\cdots$$
なので,
$(1\div3)\times3=1$ より
$$1=0.333333333333333333\cdots\times3=0.999999999999999\cdots$$
が「分かる」。
もう少し無限小数について議論しよう。
実数に対し無限小数表示というものが考えられる。
例えば $\alpha=\sqrt{2}$ を考えてみよう。
$\sqrt2$ は $\alpha^2=2,\alpha\gt0$ を満たす実数として定義された。
ここで正の実数 $a,b$ に対して
$$a^2\lt b^2\narababa a\lt b$$
が成立することを注意しておく。
$1^2=1\lt2=\kakko{\sqrt2}^2\lt4=2^2$
という関係から
$$1\lt\sqrt2\lt2$$
が分かる。
1から2を10等分して,2乗して2との大小を比較することにより
$1.4^2=1.96\lt2=\kakko{\sqrt2}^2\lt2.25=1.5^2$ を得る。
これより
$$1.4\lt\sqrt2\lt1.5$$
が分かる。
$1.4$ から $1.5$ を10等分して,2乗して2との大小を比較することにより
$1.41^2=1.9881\lt2=\kakko{\sqrt2}^2\lt2.0164=1.42^2$を得る。
これより
$$1.41\lt\sqrt2\lt1.42$$
が分かる。
これを続けていくと,$1.41421356\cdots$というような表示が得られる。
「得られる」と書いたが,ここは少し考えてみる必要があろう。
有限桁でいいなら表示は得られるだろう。
しかし,それは $\sqrt2$ ではない。
$\sqrt2$ は有理数でないことが知られており,
$\sqrt2$ は有限小数でも,循環小数でも表すことはできない。
無限小数表示を完成するためにはすべての桁の数字 -- これは無限個ある --
を決定する必要があるが,
$\sqrt2$ の小数表示のすべての桁を有限の手続きで決定することはできない。
それでは $\sqrt2$ が存在すると主張できるのだろうか。
それを主張するために,次のように考える。
無限小数表示ではすでに無限個の数字が決定されそれが並んでいる
この立場に立つと,
実際的には小数点以下すべての数を具体的に決定することは難しいかもしれないが,
$\sqrt2$ の無限小数表示は確定していて,
我々は必要な桁数の数字を決定することができる。
これが我々が通常実数に対してとっている立場である。
しかしこれだけでは,理論を展開するのに不十分である。
ここで逆を考えてみよう。
「無限小数は必ず一つの実数を表すのか?」という疑問である。
この疑問への肯定的解答が「実数の連続性」と呼ばれる性質であり,
この事実の成立を仮定する$(*1)$
のが我々の立場である。
「実数の連続性」を認めることにして最初に例として挙げた
$0.\dot{9}=1$ を「証明」してみよう。
$0.\dot{9}$ は無限小数であるから或る実数を表している。これを $\alpha$ とおくことにしよう。
$\alpha$ が $1$ 以下であることは認めてもよいであろう。
さて $\alpha$ が $1$ より小さいとしてみる。このとき
$0.9$, $0.99$, $0.999$,$\ldots$ と考えていくと
いつかは $\alpha$ を越える。
つまり,ある $n$ が存在して$\ds 1-\frac{1}{10^n}\gt\alpha$ となる。
このとき
$$\ds\alpha\lt0.\underbrace{9\cdots9}_{\textstyle n個}\lt0.\dot{9}=\alpha$$
なので矛盾。
よって$\alpha=1$である。
この議論は「無限小数とは何か」ということをきちんと定義していないので
「数学的」とは言えないが感じはつかめるかもしれない。
このことをきちんと定義すれば実数の連続性を定義できる。しかし
通常は別の公理を採用して議論する。
「実数の連続性」のきちんとした定義の前に,
実数の基本性質を整理しておこう。
[1] 演算 : 実数には和($+$)と積($\cdot$)という演算が定義されている
(1) 和の基本性質
1) $\any a,b,c\in\R\;\;(a+b)+c=a+(b+c)\hS$ (結合法則)
2) $\exists 0\in\R\;\any a\in\R\;\;a+0=0+a=a\hS$(零の存在)
3) $\any a\in\R\;\exists a'\in\R\;\; a+a'=a'+a=0$
この$a'$を$-a$と書く$\hS$(加法の逆元の存在)
4) $\any a,b\in\R\;\;a+b=b+a\hS$(交換法則)
(2) 積の基本性質
1) $\any a,b,c\in\R\;\;(a\cdot b)\cdot c=a\cdot (b\cdot c)\hS$(結合法則)
2) $\exists 1\in\R\;\any a\in\R\;\;a\cdot 1=1\cdot a=a\hS$ (単位元の存在)
3) $\any a(\ne0)\in\R\;\exists a''\in\R\;\;a\cdot a''=a''\cdot a=1$
この $a''$を $1/a$ と書く(乗法の逆元の存在)
4) $a\cdot b=b\cdot a\hS$(交換法則)
(3) 和と積の関係
$\any a,b,c\in\R\;\;a\cdot (b+c)=a\cdot b+a\cdot c\hS$
(分配法則)
[2] 順序 : 実数には順序関係 ($\leqq$) が定義されている。
(1) 順序の基本性質
1) $\any a,b\in\R$に対し
$a\leqq b$ または $b\leqq a$ が成立する
2) $\any a\in\R\;\;a\leqq a$
3) $\any a,b,c\in\R\;\;a\leqq b$, $b\leqq c \naraba a\leqq c$
4) $\any a,b\in\R\;\;a\leqq b$, $b\leqq a \naraba a=b$
(2) 和・積との関係
1) $\any a,b,c\in\R\;\;a\leqq b \naraba a+c\leqq b+c$
2) $\any a,b\in\R\;\;a\geqq 0$, $b\geqq 0 \naraba a\cdot b\geqq 0$
[3] 連続性
[1],[2]は有理数ももつ性質であり,
実数と有理数を区別するものではない。
連続性が有理数と実数を区別するものである。
色々な人が別々に実数の基礎付けを試みたので幾つか違った定義が有る。
ここでは同値な公理をあげておく。
- 任意の実数は無限小数表示を持つ。
逆に任意の無限小数表示に対しそれで表現される実数が存在する。
- $A\subset\R$とする。
「$\exists \alpha\in\R\;\any x\in A\;\;x\leqq \alpha$」
が成立するとき,$A$は上に有界であるといい,
$\alpha$を$A$の上界という。
$A$の上界の中に最小の実数が存在するとき,その実数を$A$の最小上界
または上限という。
空集合ではない上に有界な実数の部分集合には
最小上界(上限)が存在する( ワイエルシュトラスの公理)。
- 閉区間 $I_n=\kukan{a_n}{b_n}\hS(n=1,2,\ldots)$ が
すべての自然数c$n$cに対し
$\kukan{a_n}{b_n}\supset\kukan{a_{n+1}}{b_{n+1}}$ を
満たすとき,$\ds\bigcap_{n=1}^\infty I_n\neq\emptyset$
である( カントールの公理)。
- 実数全体を空でない2つの部分集合$A,B$に分け,$A$の任意の元は
$B$の任意の元より小さいとき,$A$に最大元があるか$B$に最小元があ
るかのいずれかが起こる( デデキントの公理)。
これらが「基本性質」と呼ばれる理由は実数についてのすべての性質がこれらか
ら導かれるからである。
ここで実数の連続性の同値性について若干説明する。
「無限小数表示に対しそれで表現される実数が存在する」ことからワイエルシュ
トラスの公理が出てくることを見る。
実数 $x$ が
$$x=x_0.x_1x_2x_3\cdots$$
と無限小数表示されているとき整数部分 $x_0$ を$I(x)$,少数第 $n$ 位の数 $x_n$
を$I_n(x)$と書く。
$A$ を空集合ではない上に有界な実数の集合とする。
$\set{I(x)}{x\in A}$ は整数の集合で上に有界なので最大数が存在する。
これを $p_0$ とする。
また $A_0=\set{x\in A}{I(x)=p_0}$ とおく。
$\set{I_1(x)}{x\in A_0}$ は9以下の整数の部分集合なので最大値が存在する。
これを $p_1$ とする。以下自然数 $k$ まで $p_k$ が選ばれているとする。
このとき
$A_k$ を $\set{I_{k+1}(x)\in A_{k-1}}{I_k(x)=p_k}$ とおき,
その最大値を $p_{k+1}$ とする。
こうして無限小数表示
$p_0.p_1p_2p_3\cdots$
が得られる。この無限小数表示が表現する実数が最小上界となる。
演習問題[**]1.1
$p=p_0.p_1p_2\cdots$ が $A$ の最小上界であることを証明せよ。
(以下微積分の基礎を厳密に取り扱う演習問題には($*$) を2つ付けてある。)
(1.2) 極限概念
まず「数列の極限」について考える。
高校時代の数列の極限の定義は次であった。
『$n$ を限りなく大きくするならば $a_n$ は限りなく $A$ に近づく。』
このとき,数列 $a_n$ は $A$ に収束するといい,この $A$ を極限値という。
しかしこの直観的定義は曖昧である。
この定義が数学的に明確なものならその対偶をとっても同値なはずである。
対偶命題は
$a_n$ が限りなく $A$ に近づかないならば $n$ は限りなく大きくならない。
となるがこれは明確であろうか。
イントロでも触れたが微積分は始ったときにはその理論的基礎付けは十分明確ではなかった。
極限概念に関しても特に18世紀には混乱が起こった。
一例として $1-1+1-1+\cdots$ という級数を考えてみよう。
幾つかの考え方を紹介する。
- $\alpha=(1-1)+(1-1)+\cdots$より,$\alpha=0$
- $\alpha=1+(-1+1)+(-1+1)+\cdots$より,$\alpha=1$
- $\alpha=1-(1-1+1-1+\cdots)=1-\alpha$より,$\alpha=1/2$
以上の議論により,$0=1=1/2$
極限に関して18世紀にはこの様な混乱が起こった。
この様ななかで極限概念を明確にしたのはコーシー(Cauchy 1789-1857)である。
彼は概ね以下の様に考えた。
「限りなく近づく」という概念は「距離を幾らでも小さくできる」こと,
もう少し数学的にはっきりさせると
「与えられたどんな正の数より距離を小さくできる」ことと考えた。
そして
「限りなく大きくなる」という概念は
「$n$をいくらでも大きくする」こと,
もう少し数学的にはっきりさせると
「或る大きな自然数よりも大きくする」
ことと考えた。
定義1.1
以上からコーシーは数列 $a_n$ が $A$ に収束することを次の様に定義した。
任意の正の実数 $\varepsilon$ に対し
ある自然数 $N$ が存在して,$N$ より大きい
任意の自然数 $n$ に対し $n\gt N$ ならば $|a_n-A|\lt\varepsilon$ が成立する。
前期に学んだ論理記号を用いると
$\any \epsilon\gt0\quad\exists N\in\N\quad\any n\in\N\qquad
n\gt N\naraba |a_n-A|\lt\epsilon$
とコーシーは定義した。
我々も厳密に取り扱うときにはこれを採用する。
このとき
\begin{eqnarray*}
\lim_{n\to \infty}a_n=A\hS \text{または}\qquad
a_n\to A\hSS(n\to \infty)
\end{eqnarray*}
と表す。
極限の定義は言い方を変えると
次の様にも言える。
「任意の正数 $\varepsilon$ に対して $a_n$ と $A$ との距離が $\varepsilon$
以上である $n$ は有限個しかない。」
次の定理は当たり前に見えるかもしれないが
極限の定義を厳密にすることなしに「証明」できなかった
ということは注意する必要がある。
定理1.2[極限の性質]
- 和・定数倍・積・商の極限
- $\ds\lim_{n\to\infty}(a_n+b_n)
=\lim_{n\to\infty}a_n+\lim_{n\to\infty}b_n$
- $\ds\lim_{n\to\infty}k a_n=k \lim_{n\to\infty}a_n$
- $\ds\lim_{n\to\infty}(a_n\cdot b_n)
=\lim_{n\to\infty}a_n\cdot \lim_{n\to\infty}b_n$
- $\ds\lim_{n\to\infty}b_n\ne0$のとき,
$\ds\lim_{n\to\infty}\frac{a_n}{b_n}
=\frac{\ds\lim_{n\to\infty}a_n}{\ds\lim_{n\to\infty}b_n}$
- 不等式
任意の自然数 $n$ に対し
$a_n\leqq b_n$ が成立するとき,
$\ds\lim_{n\to\infty}a_n\leqq\lim_{n\to\infty}b_n$
が成立する。
- はさみうちの定理
任意の自然数 $n$ に対し
$a_n\leqq b_n\leqq c_n$ が成立するとき,
$\ds\lim_{n\to\infty}a_n=\lim_{n\to\infty}c_n=A$ であれば
$\ds\lim_{n\to\infty}b_n$ も収束して極限値は$A$である。
演習問題[**]1.2
定理1.2 を証明せよ。
数列の収束では次の定理が理論的にも応用面でも重要である。
数列 $\bset{a_n}$が上に有界とは
「$\exists M\in\R\;\any n\in\N\;\;a_n\leqq M$」と定義し,
$\bset{a_n}$ が単調非減少数列であるとは
「$\any n\in\N\;\;a_n\leqq a_{n+1}$」と定義する。
定理1.3
上に有界な単調非減少数列は収束する。
演習問題[**]1.3
定理 1.3 を証明せよ
演習問題1.4
数列 $\bset{a_n}$ が下に有界とは
「$\exists M\in\R\;\any n\in\N\;\;a_n\geqq M$」と定義し,
$\bset{a_n}$ が単調非増加数列であるとは
「$\any n\in\N\;\;a_n\geqq a_{n+1}$」と定義する。
定理 1.3 を用いて
「下に有界な単調非増加数列が収束する」ことを証明せよ。
理論的な面でいうとこの定理は「実数の連続性」と同値である。
定理 1.3 を用いると「収束するかどうか」ということと
「極限値を求めること」を分けて考えられる。
難しい形の数列の極限を求めるとき,2つを分け
て考えることが有効である。
例を考えよう。$a_1=0$,$a_{n+1}=\dfrac12a_n+1$ (この様な式は漸化式
と呼ばれる) と帰納的に定義される数列を考える。
この数列は上に有界であり,単調非減少数列である(演習問題 1.5 参照)。
定理 1.3 よりこの数列は収束するので極限値を$\alpha$とする。
漸化式において $n\to\infty$ とすると
$\limn a_{n+1}=\limn\kakko{\dfrac12a_n+1}$,
即ち$\alpha=\dfrac12\alpha+1$ より $\alpha=2$ となる。
高校時代に,収束性を調べることなしにこのような議論をした人もいるかもしれ
ない。しかし,$a_1=0,a_{n+1}=2a_n-1$ という例から分かるように収束性抜
きにこの様な議論はできない。
しかし無理矢理前述の議論を適用してみよう。
極限値を$\alpha$として,
漸化式において
$n\to\infty$
とすると,$\alpha=2\alpha-1$となる。よって$\alpha=1$である。
しかしこれは正しくない(演習問題 1.6 参照)。
演習問題 1.5
数列 $\bset{a_n}$ を
$a_1=0,\hs a_{n+1}=\dfrac12a_n+1$ で帰納的に定義される数列とする。
- 任意の自然数 $n$ に対し $a_{n+1}-a_n\geqq0$ が成立することを数学的帰納法で示せ。
- 任意の自然数 $n$ に対し $a_n\leqq2$ が成立することを示せ。
演習問題 1.6
数列 $\bset{a_n}$ を
$a_1=0,a_{n+1}=2a_n-1$ で帰納的に定義される数列とするとき,
$a_n=1-2^{n-1}$ が成立することを示せ。
次に「関数の極限」を考えよう。直観的には
$f(x)$ において $x$ を限りなく $a$ に近づけるとき
$f(x)$ は $A$ に限りなく近づく
ことだが,
これもコーシーによって以下の様に考えられ定義された。
「限りなく近づく」という概念は数列の場合と同じ様に
「与えられたどんな正の数より距離を小さくできる」ことと考えた。
また「限りなく近づける」という概念は
「距離を小さくする」こと,
もう少し数学的にはっきりさせると
「距離をある値より小さくする」
ことと考えた。
定義1.4
以上から関数 $f(x)$ において
$x$ を限りなく $a$ に近づけたとき
$A$に収束するとは
任意の正の実数 $\varepsilon$ に対し
ある正の実数 $\delta$ が存在して $0\lt|x-a|\lt\delta$ となる
任意の実数 $x$ に対し$|f(x)-A|\lt\varepsilon$ が成立する。
前期に学んだ論理記号を用いると
$\any\epsilon\gt0\;\exists\delta\gt0\;\any x\in\R\;\;
0\lt|x-a|\lt\delta\naraba|f(x)-A|\lt\epsilon$
とコーシーは定義した。我々も厳密に取り扱うときには
これを採用する。
このとき
\begin{eqnarray*}
\lim_{x\to a}f(x)=A\hS \text{ または}\qquad
f(x)\to A&\hS(x\to a)
\end{eqnarray*}
と表す。
$x\to\infty$も同様に定義される。
任意の正の実数 $\varepsilon$ に対し
ある実数 $L$が存在して $L$ より大きい
任意の実数 $x$ に対し $|f(x)-A|\lt\varepsilon$ が成立する。
前期に学んだ論理記号を用いると
$\any\epsilon\gt0\;\exists L\in\R\;\any x\in\R\;\;
L\lt x \naraba |f(x)-A|\lt\epsilon$
このとき
\begin{eqnarray*}
\lim_{x\to \infty}f(x)=A\hS または\qquad
f(x)\to A\hS(x\to \infty)
\end{eqnarray*}
と表す。
この様な論法を $\varepsilon$-$\delta$ 論法という。
数列の極限に関する定理 1.2 と同様に
関数に対しても次を示すことができる。
定理1.5[関数の極限の性質]
- 和・定数倍・積・商の極限
- $\ds\lim_{x\to a}(f(x)+g(x))=
\lim_{x\to a}f(x)+\lim_{x\to a}g(x)$
- $\ds\lim_{x\to a}k f(x)=k \lim_{x\to a}f(x)$
- $\ds\lim_{x\to a}(f(x)\cdot g(x))=
\lim_{x\to a}f(x)\cdot \lim_{x\to a}g(x)$
- $\ds\limx{a}g(x)\ne0$ のとき,
$\ds\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}
=\frac{\ds\lim_{x\to a}f(x)}{\ds\lim_{x\to a}g(x)}$
- 不等式
任意の$x$に対し
$f(x)\leqq g(x)$ が成立するとき
$\ds\lim_{x\to a}f(x)\leqq \lim_{x\to a}g(x)$ が成立する。
- はさみうちの定理
任意の$x$に対し$f(x)\leqq g(x)\leqq h(x)$ のとき
$\ds\lim_{x\to a}f(x)=\lim_{x\to a}h(x)=A$ であれば
$\ds\lim_{x\to a}g(x)$ も収束して極限値は $A$ である。
演習問題[**]1.7
定理 1.5 を証明せよ。
ここでイントロのとき紹介した微積分学に対するバークリーの批判に対し,
$\epsilon$-$\delta$ 論法の立場で答えておこう。
$y=f(x)=x^2$の導関数を求めることに対する批判であった。
$$F=\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}=\dfrac{2xh+h^2}{h}$$
において $h$ で割算して $F=2x+h$ としておきながら,
$$\lim_{h\to0}2x+h=2x$$
とするのはおかしい
との批判であった。
コーシーの立場からは次の様な議論になる。
任意の $\epsilon\gt0$ に対し $\delta\gt0$ を適当に
見つけなくてはならないが,今 $\delta=\epsilon$
としよう。このとき
$0\lt|h|\lt\delta$ となる任意の $h$ に対し
$|F-2x|=|h|\lt\delta=\epsilon$ となるので,定義より
$\ds\lim_{h\to0}F=2x$ となる。
この立場では $h=0$ となることはない。
肩透かしの様な回答に感じるかもしれない。
しかし極限における「等号」がきちんと定義されてるのがこの
議論のよい点であろう。
バークリーの時代の議論はきちんと定義されていない
極限における「等号」を通常の「等号」と
同じように扱っていた所に問題があったといえる。
勿論バークリーが悪いのではなく,微積分の発見者の側の問題なのだが
$\ldots$
$(*1)$
最も厳密な実数の取り扱いは自然数から実数を構成し,
連続性が成立することを証明するというものである。
Last modified: 2026/09/21 19:04