(1.3)連続関数

「関数(函数)」概念は微積分というドラマの主人公ともいえるものである。 江戸時代日本に「和算」と呼ばれた「数学」があり微積分と似たようなことをやっていた。 しかしその後の発展には結びつかなかった。 私見ではあるが, 和算の2大弱点として「生産」と結び付かない 所謂「芸事」であったことに加え, 理論的には「関数概念」がなかったことが挙げられる。
「関数」は前期に学んだ。 歴史的に変化(発展)しており現代的定義と古典的取り扱いがあった。 古典的取り扱いとは

「解析的な式で表されているものが関数である」

とするもので, 現代的定義は「対応」ということを前面に出す。 ここで現代的定義をもう一度述べておく。

定義 1.6
2つの数の集合$(*1)$ $X$,$Y$ が与えられていて, $X$ の各元 $x$ に対し $Y$ の元 $y$ を対応させる規則 $f$ が与えられているとき $f$ を $X$ から $Y$ への関数といい, $$f:X\mapto Y$$ と書く。元 $x$ に元 $y$ が対応しているとき $y=f(x)$ と表す。 $X$ を定義域(始域), $Y$ を終域 (codomain), $\set{y}{\exists x\in X\, y=f(x)}$ を値域(range)}という。

例えば2次関数を例にとる。 古典的取り扱いでいうと,式 $y=f(x)=x^2$ が与えられたら関数が定まったと考える。 関数 $y=f(x)$ という言い方も使われる。 しかし現代的定義では関数 $f$ と 元 $x$ の関数の値$f(x)$ は区別するし, 定義域,終域を決めなくてはならない。 この例でいうと, 例えば $X=\R{}$(定義域),$Y=\R{}$(終域)とし,$x$に対し $x^2$ を対応させる規則を $f$ と定義する。
この立場では終域を $Y'=\{x\in\R{}\ |\ x\geqq0\}$ としたものは 前とは違う関数になる。混乱のおそれがない場合には,この取り扱いはいかにも片苦しい。 講義では現代的定義を採用するが,誤解の恐れのないときは古典的取り扱いもする。

定義 1.7
2つの関数 $f:X\mapto Y$ と $g:Y\mapto Z$ に対し関数 $$h:X\mapto Z$$ で $h(x)=g(f(x))$ となるものが 存在する。この関数 $h$ を $f$ と $g$ の合成関数(composite function) といい $h=g\circ f$ と表す。
関数 $f:X\mapto Y$ が全単射であるとする。 $y=f(x)$ とするとき,$y$ に対し $x$ を対応させる関数が考えられる。 これを $f$ の逆関数(inverse function)といい $f^{-1}$ で表す。 $f^{-1}$ の定義域は $Y$,終域は $X$ なので $$f^{-1}:Y\mapto X$$ となる。 関数の値は $$y=f(x)\quad\narababa\quad x=f^{-1}(y)$$ となる。

関数の中でも「連続関数」は解析学において重要である。 直感的にはグラフがつながっているという感じだが, 定義は極限に基づいてされるのでグラフが書けそうもないものもある。

定義 1.8 [連続関数]
$f:I\mapto \R{}$ をある区間 $I$で 定義された関数とする。
(1) $a\in I$ に対し $\ds\lim_{x\ra a}f(x)=f(a)$ が成立するとき関数 $f(x)$ は $x=a$ で連続(continous)であるという。 ただし閉区間の右(左)端の点の極限は左(右)極限を意味するものとする。
(2) $I$ の任意の点で連続のとき $f$ は $I$ で連続という。 定義域で連続な関数を連続関数(continous function)という。

定義の(1)は
$\limx{a}f(x)=f(\limx{a}x)$
と書き直すと, 極限をとるという操作と関数で写すという操作の順序を入れ換える ことができることを意味する。このようなとき2つの操作は可換であるという。

連続関数の幾つかの重要な定理を紹介する。

定理1.9 [最大値の定理]
閉区間で定義された連続関数は最大値をとる。

定理1.10 [中間値の定理]
連続関数は中間値をとる。 即ち,閉区間 $\heikukan ab$ で定義された 連続関数 $f$ が $f(a)\lt f(b)$ を満たしているとする。 $f(a)\lt\alpha\lt f(b)$ となる任意の $\alpha$ に対しある $c$ ($a\lt c\lt b$) が存在して $f(c)=\alpha$ となる。

定理1.11 [逆関数の定理]
実数全体または区間で定義された単調で連続な関数に対して逆関数が存在して, その逆関数も連続関数になる。

最大値定理は「実数の連続性」から導かれる。そして最大値定理を用いて 「微積分の基本定理」が証明される。 上であげた定理はいずれもきちんと証明するためには,基礎理論からきちんと議 論する必要がある。

演習問題[**]1.8
定理 1.9,1.10,1.11 を証明せよ。
演習問題[**]1.9
定理 1.9 を既知として次を証明せよ。
閉区間で定義された連続関数は最小値をとる。
演習問題[**]1.10
定理 1.10 を既知として次を証明せよ。 閉区間 $\kukan ab$ で定義された連続関数 $f$ が $f(a)\gt f(b)$ を満たしているとする。 $f(a)\gt \alpha\gt f(b)$ となる任意の $\alpha$ に対しある $c\hs(a\lt c\lt b)$ が存在して $f(c)=\alpha$ となる。

(1.4) 導関数

関数 $f$ の導関数 $f'$ は (存在する場合) 次の式で定義されるものであった。 $$f'(x)=\lim_{h\to0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}$$ この極限が存在するとき,$f$ は $x$ で微分可能(differentiable)であるという。 定義域の各点で微分可能であるとき,関数 $f$ は微分可能(differentiable) であるという。ただし $f$ の定義域が閉区間 $I$ のとき区間の左端の点 $a$ で微分可能とは次の右極限が存在する場合をいう。 $$f'(a)=f'_+(a)=\lim_{h\to+0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}$$ 右端の点の場合は次の左極限の存在する場合をいう。 $$f'(a)=f'_-(a)=\lim_{h\to-0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}$$
演習問題[**]1.11
微分可能な関数は連続であることを示せ。 また連続であるが微分可能でない関数の例をあげよ。

前期すでに学んでいるが,重要なので再度 「微分$=$線型近似(1次近似)」に関して説明しておく。$f$ は微分可能とする。 今 $x=a+h$ とし,$a$ のまわりの関数の様子を考える。 $$\epsilon(h)=\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}-f'(a)$$ とおくと $h\to0$ のとき $\epsilon(h)\to0$ となる。 つまり $$f(x)=f(a+h)=f(a)+f'(a)h+\epsilon(h) h$$ において $h$ が非常に小さい ($0$ に近い) とき, $\epsilon(h) h$ は非常に$^2$ 小さいと考えられ る。この項を無視した残りの項は $h$ の1次式になるが, これが $f(x)$ を近似しているので,線型近似と呼ばれる。 この1次式は $$f(x)=f(a+h)\fallingdotseq f(a)+f'(a)h$$ である。
逆に微分可能な関数 $f(x)=f(a+h)$ を $a$ のまわりで $h$ に関する1次式 $A+Bh$ で「近似」することを考え る。直線と関数の差を $$d(h)=f(a+h)-(A+Bh)$$ とおく。 「近似」と呼ぶには $\ds\lim_{h\to0} d(h)=0$ は必要であろうが,ここでは もう少し強い条件を要求する。 $h$ に比べて $d(h)$ が小さいとき, 即ち $$\ds\lim_{h\to0} \frac{d(h)}h=0$$ をみたすとき,この1次式 $A+Bh$ を $x=a $で $y=f(x)$ を近似する1次式 と呼ぶ。
$\ds\lim_{h\to0} d(h)=f(a)-A$ なので $A=f(a)$ である。 $\epsilon(h)=\dfrac{d(h)}{h}$ とおくと, 近似の条件は $\ds\lim_{h\to0}\epsilon(h)=0$ となるが, このとき \begin{eqnarray*} \epsilon(h)&=&\frac{f(a+h)-(f(a)+Bh)}{h} =\frac{f(a+h)-f(a)}{h}-B \end{eqnarray*} となるので $B=f'(a)$ となる。よって 近似する1次式は $f(a)+f'(a)h$ である。 この1次式を $x$ で表すと $x=a+h$ より $f'(a)(x-a)+f(a)$ となり,接線であることが分かる。
以上のことから「微分」,「線型近似」,「接線」は三位一体の関係にあると 言える。このことを次の図で表しておこう。

近似の精度をあげて,$f(x)=f(a+h)$ を $x=a$ で $h$ に関する2次式 $A+Bh+Ch^2$ で近似することを考える。 $d(h)=f(a+h)-(A+Bh+Ch^2)$ に対し $\epsilon(h)=\dfrac{d(h)}{h^2}$ とおく。 $\ds\lim_{h\to0}\epsilon(h)=0$ が成立するとき, この2次式を $y=f(x)=f(a+h)$ を $x=a $で近似する2次式と定義する。 $y=f(x)$ は微分可能であり, さらに導関数 $f'(x)$ も微分可能であり,$f''(x)$は 連続であるとする。 このとき $d(h)=\epsilon(h)h^2$ なので $0=\ds\lim_{h\to0} d(h)=f(a)-A$ より $A=f(a)$ となる。 $$\lim_{h\to0}\frac{d(h)}{h}=\lim_{h\to0}\epsilon(h)h=0$$ なので \begin{eqnarray*} \lim_{h\to0}\frac{d(h)}h&=& \lim_{h\to0}\frac{f(a+h)-(f(a)+Bh+Ch^2)}{h}\\ &=&\lim_{h\to0}\kakko{\frac{f(a+h)-f(a)}{h}-B-Ch}\\ &=&f'(a)-B \end{eqnarray*} となる。これより $f'(a)=B$ が得られる。 また \begin{eqnarray*} \lim_{h\to0} \epsilon(h)&=&\lim_{h\to0}\frac{f(a+h)-(f(a)+f'(a)h+Ch^2)}{h^2}\\ &=&\lim_{h\to0}\frac{f'(a+h)-f'(a)-2Ch}{2h}\hS\hbox{(ロピタルの定理を使用)}\\ &=&\lim_{h\to0}\frac{f''(a+h)-2C}{2} \end{eqnarray*} となるので $\ds\lim_{h\to0}\epsilon(h)=0$ より $C=\dfrac{f''(a)}{2}$ となる。 よって $y=f(x)$ を $x=a$ で近似する2次式は $$f(x)\fallingdotseq f(a)+f'(a)h+\frac{f''(a)}{2}h^2$$ である。 $h=x-a$ で書き直した $$f(x)\fallingdotseq f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}{2}(x-a)^2$$ という表現も使われる。

$y=f(x)=f(a+h)$ を $x=a$ で 近似する $h$ の $n$ 次式 $g(h)$ とは $d(h)=f(a+h)-g(h)$ に対し $$\epsilon(h)=\dfrac{d(h)}{h^n}$$ とおくとき $\ds\lim_{h\to0}\epsilon(h)=0$ が成立するものをいう。

この1次近似,2次近似,3次近似を $y=f(x)=\sin x$ を例に幾何学(図形)的に見てみよう。 この関数を $x=\dfrac\pi4$ で近似することを考える。 定義に基づいて導関数を求めて計算できるが, ここでは演習問題 1.12 の結果を用いる。

$y=f(x)$ を $x=a$ で近似する1次式,2次式,3次式は \begin{align*} f(x)\fallingdotseq &f(a)+f'(a)(x-a)\\ f(x)\fallingdotseq&f(a)+f'(a)(x-a)+\frac12f''(a)(x-a)^2\\ f(x)\fallingdotseq&f(a)+f'(a)(x-a)+\frac12f''(a)(x-a)^2+\frac1{3!}f'''(a)(x-a)^3 \end{align*} である。
$f(x)=\sin x $なので $f'(x)=\cos x$,$f''(x)=-\sin x$, $f'''(x)=-\cos x$ である。 また $x=\dfrac\pi4$ のまわりでの近似なので,$a=\dfrac\pi4$とする。
$f\kakko{\dfrac\pi4}=\dfrac1{\sqrt2}$, $f'\kakko{\dfrac\pi4}=\dfrac1{\sqrt2}$より,近似する1次式は $$f(x)\fallingdotseq f\kakko{\frac\pi4}+f'\kakko{\frac\pi4}\kakko{x-\frac\pi4} =\frac1{\sqrt2}+\frac1{\sqrt2}\kakko{x-\frac\pi4}$$ 近似する2次式,3次式は \begin{align*} f(x)\fallingdotseq&\frac1{\sqrt2}+\frac1{\sqrt2}\kakko{x-\frac\pi4}-\frac1{2\sqrt2}\kakko{x-\frac\pi4}^2\\ f(x)\fallingdotseq&\frac1{\sqrt2}+\frac1{\sqrt2}\kakko{x-\frac\pi4}-\frac1{2\sqrt2}\kakko{x-\frac\pi4}^2 -\frac1{6\sqrt2}\kakko{x-\frac\pi4}^3 \end{align*} である。

$x=\dfrac\pi4$の近くでは直線もよい近似を与えているが $\dfrac\pi4$から離れるにしたがって遠ざかっていく。 2次式,3次式でも事情は同じだが,だんだん近似がよくなっていくのが見て取れ ると思う。

演習問題 1.12
$y=f(x)=f(a+h)$ を $x=a$ で 近似する $h$ の3次式を求めよ。 関数は何回でも微分できることを仮定する。

演習問題 1.13
次の関数 $y=f(x)$ を $x=a$ で近似する1次式,2次式,3次式,4次式 を求めよ。ただし演習問題 1.12 を使用してよい。
  1. $f(x)=\cos\kakko{x+\dfrac{\pi}4} \;(a=0)$
  2. $f(x)=e^x\quad (a=1)$
  3. $f(x)=\log x\quad (a=1)$
  4. $f(x)=\arctan x\quad (a=0)$
  5. $f(x)=\arctan x\quad (a=1)$
  6. $f(x)=(x+1)^5 \quad (a=0)$

演習問題 1.14 $f(x)$ を $x=a$ で近似する3次式を $$f(x)\fallingdotseq f(a+h)=a_0+a_1h+a_2h^2+a_3h^3$$ とするとき次を示せ。
  1. $y=f(x)$を $x=a$ で近似する1次式は $g_1(h)=a_0+a_1h$ である。
  2. $y=f(x)$ を $x=a$ で近似する2次式は $g_2(h)=a_0+a_1h+a_2h^2$ である。

演習問題 1.15 演習問題 1.13 の問題を 演習問題 1.12 を使用せず 定義に基いて求めよ。 ただし演習問題 1.14 および数学序論で学んだロピタルの定理は用いてよい。

ここで前期に学んだ定理について結果のみ記しておく。理解があやふやな人は復 習しておくこと。

定理 1.12 関数 $f,g$ は微分可能とし,$a$ は定数とする。
  1. $(f+g)'=f'+g'$
  2. $(af)'=af'$
  3. $(fg)'=f'g+fg'$ (積の微分法}

定理 1.13 [合成関数の微分法] 関数 $y=f(x)$ と $z=g(y)$ が共に微分可能で合成関数 $z=g\circ f(x)=g(f(x))$ が定義されるとき $$\dfrac{dz}{dx}=\dfrac{dz}{dy}\dfrac{dy}{dx}$$ が成立する。

定理 1.14 [逆関数の微分法] ある区間 $I$ または実数全体で定義された 関数 $f$ が微分可能かつ単調 であるとき,逆関数は微分可能で導関数は $$\dfrac{dx}{dy}=\dfrac{1}{\dfrac{dy}{dx}}$$

定理 1.15
  1. $\big(x^a\big)'=ax^{a-1}$
  2. $\big(e^x\big)'=e^x$
  3. $\big(a^x\big)'=a^x \log a$
  4. $(\log x)'=\dfrac{1}{x}$
  5. $(\log_a x)'=\dfrac{1}{x\log a}$
  6. $(\sin x)'=\cos x$
  7. $(\cos x)'=-\sin x$
  8. $(\tan x)'=\dfrac{1}{\cos^2x}$
  9. $\big(\arcsin x\big)'=\dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}}$
  10. $\big(\arccos x\big)'=-\dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}}$
  11. $\big(\arctan x\big)'=\dfrac{1}{1+x^2}$

導関数の計算は数学序論ですでにやっているので,演習問題は用意しなかった。 微分の計算がよくわからないという人は数学序論の導関数の計算部分の演習問題 をもう一度やってみること。

(1.5) 平均値の定理

この節で取り上げる平均値の定理は微積分学全体の 中でもキーポイントとなる重要な定理である。

定理 1.16 [平均値の定理] 関数 $f$ は閉区間 $\heikukan ab$ で連続, 開区間 $\kaikukan ab$ で微分可能とする。このとき $a\lt c\lt b$ を満たす $c$ が存在して $$f'(c)=\frac{f(b)-f(a)}{b-a}$$ が成立する。

この定理を示すために 次の定理を用いる。
定理 1.17 [Rolle(ロル)の定理] 関数 $f$ は閉区間 $\heikukan ab$ で連続, 開区間 $\kaikukan ab$ で微分可能とする。 $f(a)=f(b)$ ならば $a\lt c\lt b$ をみたす $c$ が存在して $f'(c)=0$ が成立する。

証明 最大値定理より最大値を与える $c$ が存在する。今 $a\lt c \lt b$を仮定する。 $c$ は最大値を与えるので任意の $h$ に対し $c+h$ が区間 $\heikukan ab$ に入っていれば $f(c+h)\leqq f(c)$ が成立する。 $h\gt 0$ のとき $\dfrac{f(c+h)-f(c)}{h}\leqq0$ なので $$f'(c)=f'_+(c)=\lim_{h\to+0}\frac{f(c+h)-f(c)}{h}\leqq0$$ が成立する。 また$h\lt0$ のとき $\dfrac{f(c+h)-f(c)}{h}\geqq0$ なので $$f'(c)=f'_-(c)=\lim_{h\to-0}\frac{f(c+h)-f(c)}{h}\geqq0$$ が成立する。 $0\leqq f'(c)\leqq0$より $f'(c)=0$である。
途中 $a\lt c\lt b$ を仮定したが, これが成立しない場合 $f(a)=f(b)$ が最大値となっている。 $f$ が定数関数の場合は定理は成立しているので定数関数 でないと仮定する。 このときは 前述の議論を最小値に関して行えばよい (演習問題 1.16 参照)。 $\rule{1.5mm}{3.5mm}$(このマークは証明終了を表す)

演習問題 1.16
定理の証明の最後の部分(最小値 $c$ が $a\lt c\lt b$ に存在するとき $f'(c)=0$ となる)を証明せよ。

この定理から平均値の定理が示されるが, ここでは平均値の定理を一般化した次の定理を 示す。

定理 1.18 [コーシーの平均値定理] 関数 $f,g$ は閉区間 $\heikukan ab$ で連続, 開区間 $\kaikukan ab$ で微分可能とする。 $\kaikukan ab$ で $g'(x)\neq0$ ならば $a\lt c\lt b$ をみたす$c$が存在して $$\frac{f'(c)}{g'(c)}=\frac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}$$ が成立する。

定理において $g(x)=x$ とおくと平均値の定理になる。

証明 天下りではあるが $$F(x)=(f(b)-f(a))(g(x)-g(a))-(g(b)-g(a))(f(x)-f(a))$$ とおく。この関数 $F$ は $\heikukan ab$ で連続,$(a,b)$で 微分可能である。 また $F(a)=0, F(b)=0$ が成立する。 よって Rolleの定理より $c \hS(a\lt c\lt b)$ が存在して $ F'(c)=0 $が成立する。 $$F'(x)=(f(b)-f(a))g'(x)-(g(b)-g(a))f'(x)$$ なので $$0=F'(c)=(f(b)-f(a))g'(c)-(g(b)-g(a))f'(c)$$ が成立する。 $g(b)-g(a)=0$ とすると, $g'(x)\neq0$ より Rolleの定理に矛盾する。 よって $g(b)-g(a)\neq0$ となる。 割り算を実行すれば定理が得られる。$\rule{1.5mm}{3.5mm}$

ここで 平均値の定理を少し拡張した形で書き直しておこう。 $b=a+h$ とし, $\theta=\dfrac{c-a}{h}$ とおくと平均値の定理は $$f(a+h)-f(a)=f'(a+\theta h)h\hS (0\lt \theta\lt 1)$$ となる $\theta$ が存在するという形になる。 この形で考えると,$h$ が負のときも定理は成立する。即ち次の形で述べることができる。

定理 1.19 関数 $f$ は区間 $I$ で微分可能とする。$a,a+h$ が区間 $I$ に属しているとする。 このときある $\theta\hs (0\lt \theta\lt 1$) が存在して $$f(a+h)-f(a)=f'(a+\theta h)h$$ となる。

平均値の定理から次の系が従う。

系 1.20 $f,g$ は区間 $I$ で微分可能とする。
  1. 区間 $I$ において $f'(x)=0$ ならば $f(x)$ は定数関数である。
  2. 区間 $I$ において $f'(x)=g'(x)$ ならば ある定数 $C$ が存在して $f(x)=g(x)+C$ と書ける。

系 1.21 $f$ は区間 $I$ で微分可能とする。
  1. 区間 $I$ において $f'(x)\gt0$ ならば $f$ は $I$ において単調増加である。
  2. 区間 $I$ において $f'(x)\lt0$ ならば $f$ は $I$ において単調減少である。

系 1.22 $f$ は区間 $I$ で微分可能とする。
  1. 区間 $I$ において $f'(x)\geqq 0$ ならば $f$ は $I$ において単調非減少である。
  2. 区間 $I$ において $f'(x)\leqq 0$ ならば $f$ は $I$ において単調非増加である。
単調非減少とは任意の $x_1,x_2$ に対して $x_1\lt x_2$ ならば $f(x_1)\leqq f(x_2)$ が成立することをいう。 同様に単調非増加とは任意の $x_1,x_2$ に対して $x_1\lt x_2$ ならば $f(x_1)\geqq f(x_2)$ が成立することをいう。

[演習問題 1.17] 平均値の定理から系 1.20, 1.21,1.22 を導け。

解析学IIで「微積分の基本定理」と呼ばれる定理を証明するが, そのときキーになる命題が 系 1.20 である。系 21, 1.22 は数学序論においても学んだ増減表・グラフの概形を描くことの基礎にある命題である。 また定理 1.18 は数学序論で不定形の極限を求めるとき有効だったロピタルの定理の基礎にある定理である。
通常の講義であれば次にロピタルの定理などの応用を扱うのだが, 序論で扱っているので省略する。 理解があやふやな人は序論の該当部分を復習しておくこと。

[演習問題[*] 1.18]
定理 1.18 を用いてロピタルの定理を証明せよ。 ロピタルの定理とは以下の内容の定理である。
$f$, $g$ は $a$ の周りで微分可能とする。 $\ds\lim_{x\to a} f(x)=0$ かつ $\ds\lim_{x\to a}g(x)=0$ あるいは, $\ds\lim_{x\to a}f(x)=\pm\infty$ かつ $\ds\lim_{x\to a}g(x)=\pm\infty$ となるとき, $\ds\lim_{x\to a}\dfrac{f'(x)}{g'(x)}$ が存在すれば $\ds\lim_{x\to a} \frac{f(x)}{g(x)}$ も存在して, 両者の値は一致する。 ここで $a$ は $\pm\infty$ でもよい。
$(*1)$「数の集合」と言った場合一般的には複素数の部分集合を意味する。 解析学I,IIでは定義域・終域共に実数の部分集合を考えることが多いので, 特に断らない限りこの講義では実数の部分集合を意味することとする。
Last modified: 2026/09/21 14:53