(1.6) 高次導関数とTaylorの定理
関数 $y=f(x)$ の導関数 $y'=f'(x)$ が微分可能なとき更にその導関数を考えることが出来る。
$y=f(x)$の導関数の導関数を2次導関数または2階の導関数といい
$$\dfrac{d^2f}{dx^2},\hS\dfrac{d^2y}{dx^2},\hS f''(x),\hS y''$$
などと表す。
$y=f(x)$ の導関数の導関数の導関数を3次導関数または3階の導関数といい
$$\dfrac{d^3f}{dx^3},\hS\dfrac{d^3y}{dx^3},\hS f'''(x),\hS y'''$$
などと表す。
$n$ を $0$ 以上の整数とする。
$f(x)$ を $n$ 回微分して得られる関数を $n$ 次の導関数または $n$ 階の導関数といい
$$\dfrac{d^nf}{dx^n},\hS\dfrac{d^ny}{dx^n},\hS f^{(n)}(x),\hS y^{(n)}$$
などと表す。
$f^{(0)}(x)$は$f(x)$を $0$ 回微分したもの,
即ち一回も微分しない
$0$次導関数なので,
$f^{(0)}(x)=f(x)$を意味する。
2階以上の導関数を高次導関数と呼ぶ。
以下この節では関数は必要な回数だけ微分可能
であることを仮定する。
関数の和の高次導関数を考える。
$F(x)=f(x)+g(x)$ とすると
$$F'(x)=f'(x)+g'(x)$$
であり,もう一度微分すると
$$F''(x)=f''(x)+g''(x)$$
となる。何回微分しても同様なので
$$\kakko{f(x)+g(x)}^{(n)}=f^{(n)}(x)+g^{(n)}(x)$$
となる。
次に関数の積の高次導関数を考える。
$F(x)=f(x)g(x)$のとき積の微分法より
$$F'(x)=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)$$
である。
もう一度微分すると
\begin{align*}
F''(x)&=f''(x)g(x)+f'(x)g'(x)+f'(x)g'(x)+f(x)g''(x)\\
&=f''(x)g(x)+2f'(x)g'(x)+f(x)g''(x)
\end{align*}
となる。
更にもう一度微分すると
\begin{align*}
F'''(x)&=\kakko{f''(x)g(x)}'+2\kakko{f'(x)g'(x)}'+\kakko{f(x)g''(x)}'\\
&=f'''(x)g(x)+f''(x)g'(x)+2f''(x)g'(x)+2f'(x)g''(x)+f'(x)g''(x)+f(x)g'''(x)\\
&=f'''(x)g(x)+3f''(x)g'(x)+3f'(x)g''(x)+f(x)g'''(x)
\end{align*}
となる。
一般に次が成立する。
命題 1.23[ライプニッツの定理]
$$\kakko{f(x)\cdot g(x)}^{(n)}=\sum_{k=0}^n \binom nkf^{(n-k)}(x)g^{(k)}(x)$$
ここで $\ds\binom nk$ は2項係数で $\ds\binom nk=\frac{n!}{k!(n-k)!}$ である。
例えば $n=4$ のとき
$$\kakko{fg}^{(4)}=f^{(4)}g+4f^{(3)}g^{(1)}+6f^{(2)}g^{(2)}+4f^{(1)}g^{(3)}
+fg^{(4)}$$
となる。
演習問題 1.19
ライプニッツの定理を数学的帰納法で証明せよ。
2項係数に関して
\begin{align*}
\binom n{k-1}+\binom nk&
=\binom{n+1}k\end{align*}
が成立することは既知としてよい。
例 1.24
-
$f(x)=xe^x$ の $n$ 次導関数を求める。
$g(x)=x,h(x)=e^x$ とおくと,
$g'(x)=1$, $g''(x)=0$, $g^{(n)}(x)=0$ ($n\geqq2$)
であり,$h^{(n)}(x)=e^x\hs (n\geqq0$) なのでライプニッツの定理より
\begin{align*}
f^{(n)}(x)&=\sum_{k=0}^n\binom nkh^{(n-k)}(x)g^{(k)}(x)\\
&=\sum_{k=0}^1\binom nkh^{(n-k)}(x)g^{(k)}(x)
=xe^x+ne^x
\end{align*}
となる。
-
$f(x)=\dfrac1x$ とする。
$f'(x)=-\dfrac1{x^2}$,
$f''(x)=\dfrac2{x^3}$,
$f'''(x)=-\dfrac6{x^4}=-\dfrac{3!}{x^4}$ なので
$$f^{(n)}(x)=(-1)^n\frac{n!}{x^{n+1}}$$
と予想できる。これを数学的帰納法で証明する。
$n=1$ のときは
\begin{align*}
f'(x)&=-\frac1{x^2}=(-1)^1\frac{1!}{x^{1+1}}
\end{align*}
なので成立している。
$n=k$ のとき成立を仮定する。即ち
$$f^{(k)}(x)=(-1)^k\frac{k!}{x^{k+1}}$$
を仮定する。
両辺を $x$ で微分すると
\begin{align*}
f^{(k+1)}(x)&=\kakko{f^{(k)}(x)}'
=\kakko{(-1)^k\frac{k!}{x^{k+1}}}'\\
&=(-1)^k(-(k+1))\frac{k!}{x^{k+2}}
=(-1)^{k+1}\frac{(k+1)!}{x^{(k+1)+1}}
\end{align*}
なので $k+1$ のときも成立する。
演習問題 1.20
次の関数の $n$ 次導関数を求めよ。
(問題では「数学的帰納法で示す」ことを要求されてないので,数学的帰納法で
証明しなくてもよいが,それを要求されたときはできるようにしておくこと。)
- $f(x)=x^3e^x$
- $f(x)=x^3\log x$
- $f(x)=\dfrac1{x+1}$
- $f(x)=\log(x+1)$
- $f(x)=\dfrac1{x^2-x}$
- $f(x)=\sin x$
- $f(x)=\sin x\cos x$
- $f(x)=x^4$
次の定理は「Taylorの定理」と呼ばれ色々な応用がある。
定理 1.25 [Taylor(テーラー)の定理]
\begin{align*}
f(x)&=\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k
+\frac{f^{(n)}(a+\theta(x-a))}{n!}(x-a)^n\\
&=f(a)+f'(a)(x-a)+\cdots+\frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(x-a)^{n-1}
+\frac{f^{(n)}(a+\theta(x-a))}{n!}(x-a)^n
\end{align*}
を満たす $\theta \hs(0\lt\theta\lt1$) が存在する。
$R_n=\dfrac{f^{(n)}(a+\theta(x-a))}{n!}(x-a)^n$
を剰余項と呼ぶ。
証明
天下りではあるが,
$\ds R=f(x)-\left(\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k\right)$
と置き,
$$F(t)=f(x)-\left(\ds\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k)}(t)}{k!}(x-t)^k\right)-
\frac{R}{(x-a)^n}(x-t)^n$$
と置く。
\begin{align*}
\dfrac{d}{dt}\kakko{\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k)}(t)}{k!}(x-t)^k}&
=\dfrac{d}{dt}\kakko{f(t)+\sum_{k=1}^{n-1}\frac{f^{(k)}(t)}{k!}(x-t)^k}\\
&=f'(t)+\sum_{k=1}^{n-1}\kakko{\frac{f^{(k+1)}(t)}{k!}(x-t)^k-\frac{f^{(k)}(t)}{k!}k(x-t)^{k-1}}\\
&=\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k+1)}(t)}{k!}(x-t)^k
-\sum_{k=\tcr1}^{n-1}\frac{f^{(k)}(t)}{k!}k(x-t)^{k-1}\\
&=\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k+1)}(t)}{k!}(x-t)^k
-\sum_{k=1}^{n-1}\frac{f^{(k)}(t)}{(k-1)!}(x-t)^{k-1}\\
&=\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k+1)}(t)}{k!}(x-t)^k
-\sum_{k=0}^{n-2}\frac{f^{(k+1)}(t)}{k!}(x-t)^{k}\\
&=\frac{f^{(n)}(t)}{(n-1)!}(x-t)^{n-1}
\end{align*}より
\begin{align*}
\dfrac{dF(t)}{dt}&=
-\dfrac{d}{dt}\kakko{\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k)}(t)}{k!}(x-t)^k}
+\frac{R}{(x-a)^n}n(x-t)^{n-1}\\
&=-\frac{f^{(n)}(t)}{(n-1)!}(x-t)^{n-1}+\frac{R}{(x-a)^n}n(x-t)^{n-1}\\
&=\kakko{\frac R{(x-a)^n}-\frac{f^{(n)}(t)}{n!}}n(x-t)^{n-1}
\end{align*}
このとき,
\begin{align*}
F(a)&=f(x)-\left(\ds\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k\right)-
\frac{R}{(x-a)^n}(x-a)^n\\
&=f(x)-\left(\ds\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k\right)-R\\
&=R-R=0\\
F(x)&=f(x)-\left(\ds\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k)}(x)}{k!}(x-x)^k\right)-
\frac{R}{(x-a)^n}(x-x)^n\\
&=f(x)-f(x)=0
\end{align*}
が成立するので
ロルの定理より $\dfrac{dF(c)}{dt}=0$ ($a\lt c\lt x$または$x\lt c\lt a$) となる
$c$ が存在する。
このとき
$\dfrac{R}{(x-a)^n}-\dfrac{f^{(n)}(c)}{n!}=0$
が成立する。
$\theta=\dfrac{c-a}{x-a}$と
置くと定理が得られる。
$\blackbox$
剰余項 $R_n$ には $\theta$ を用いる表現と
$c$ を用いる表現があり,$c$ の方が表記が簡単であるが,範囲の条件に場合分けが必要になる。
$\theta$ を用いると
$R_n=\dfrac{f^{(n)}(a+\theta(x-a))}{n!}(x-a)^n$,
$c$を用いると
$R_n=\dfrac{f^{(n)}(c)}{n!}(x-a)^n$
と書ける。
範囲の条件は $\theta$ の場合は $0\lt \theta\lt 1$,
$c$ の場合は,$a\lt x$ のとき $a\lt c\lt x$,
$x\lt a$ のとき $x\lt c\lt a$ となる。
演習問題 1.21
$a\neq x$ のとき
$c=a+\theta(x-a)$ とする。次を示せ。
$$0\lt \theta\lt1\narababa\left\{%
\begin{array}{cc}
a\lt c\lt x&(a\lt x \hbox{のとき})\\
x\lt c\lt a&(x\lt a \hbox{のとき})
\end{array}\right.$$
定理 1.25 は次の形でも述べることができる。
系 1.26
任意の$h$に対し,
ある $\theta\hs(0\lt \theta\lt 1)$ が
存在して
$$f(a+h)=\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k)}(a)}{k!}h^k%
+\frac{f^{(n)}(a+\theta h)}{n!}h^n$$
と表せる。
Taylorの定理について3つの応用を扱う。
最初の応用として極値に関する次の定理を考える。
定理 1.27
$f'(a)=\cdots=f^{(n-1)}(a)=0$, $f^{(n)}(a)\neq0$とする。
[1] $n$ が偶数のとき $f(x)$ は $x=a$ で極値をとる。
- $f^{(n)}(a) \gt0$ のとき $f(a)$ は極小である。
- $f^{(n)}(a) \lt0$ のとき $f(a)$ は極大である。
[2] $n$ が奇数のとき $f(x)$ は $x=a$ で極値をとらない。
- $f^{(n)}(a) \gt0$ のとき $f(x)$は $x=a$ で増加の状態にある。
- $f^{(n)}(a) \lt0$ のとき $f(x)$ は $x=a$ 減少の状態にある。
証明
[1], [2] とも (1) の場合のみ示す。
$f^{(n)}$ が連続かつ $f^{(n)}(a)\gt0$ なので
$a$ を含むある区間 $(a-\delta,a+\delta)$
において $f^{(n)}(x)\gt 0$ となる。
この区間内の $x$ について
テーラーの定理を適用すると
$f'(a)=\cdots=f^{(n-1)}(a)=0$ なので
$f(x)=f(a)+\dfrac{f^{(n)}(c)}{n!}(x-a)^n$
となる。
[1] $n$が偶数の場合 $x\neq a$ ならば
$(x-a)^n\gt0$ なので,$f(x)-f(a)\gt0$ 即ち
$f(x)\gt f(a)$ となる。
よって $f$ は
$x=a$ で極小である。
[2] $n$が奇数の場合 $x-a\gt 0$ ならば $(x-a)^n\gt 0$,
$x-a\lt0$ ならば $(x-a)^n\lt0$ である。
よって$x\gt a $ならば $f(x)\gt f(a)$,
$x\lt a$ならば$f(x)\lt f(a)$ となっている。
\blackbox
演習問題 1.22
定理 1.27 の [1], [2] の (2) の場合を証明せよ。
具体例を知っていると定理 1.27 の理解が容易になるかもしれない。
$y=f(x)=x^2$ とする。$x=0 $で $y=f(x)$ は最小値なので,極小である。
$f'(0)=0,f''(0)\neq0$ なので定理の$n=2$ (偶数)の場合で実際極値になってい
る。
次に $y=f(x)=x^3$ とする。
$f'(0)=f''(0)=0,f'''(0)\neq0$ なので定理の $n=3$
(奇数) の場合で実際極値ではない。
実際に $y=f(x)=x^3$ は $x=0$ で極値をとらないことが知られている。
Taylorの定理の2番目の応用として近似がある。
$3$ 次までの近似はすでに扱っているが,Taylorの定理を用いると
何次まででも考えることができることに加えて,
「誤差の評価がきちんとできる」という利点がある。
$n=2$ の場合を考えてみよう。
$n=2$ の場合
$$f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(c)}{2!}(x-a)^2$$
となるが,
$f''(x)$は有界なので,
$x-a$が非常に小さいとき,
最後の項は(非常に)$^2$小さい。よってこの項を切り捨てる。
これは線型近似を与えた。
真の値 $f(x)$ と近似値 $f(a)+f'(a)(x-a)$ の差を
誤差と言うが,誤差の絶対値が最大どれ位になるかを評価しよう。
誤差を $\Delta$ とすると
$$\Delta=f(x)-\kakko{f(a)+f'(a)(x-a)}=\frac{f''(c)}2(x-a)^2$$
となるので$\left|f''(x)\right|$の最大値を
$$M=\max\set{\left|f''(x)\right|}{x\in I}\qquad
(I=\heikukan ax\hbox{または}\heikukan xa)$$
とすると
$$|\Delta|\leqq \frac{M}2|x-a|^2$$
が分かる。
例を考える。$f(x)=\sin x$,
$x=\dfrac{5\pi}{16}$,
$a=\dfrac{\pi}4$ とする。
$n=2$
としてTaylorの定理を用い剰余項を切り捨てると近似値は
\begin{align*}
\sin\kakko{\frac{5\pi}{16}}
&\fallingdotseq
\sin\kakko{\frac\pi4}+\cos\kakko{\frac\pi4}\kakko{\frac{5\pi}{16}-\frac\pi4}
=\frac1{\sqrt2}+\frac1{\sqrt2}\frac\pi{16}
\end{align*}
である。
$f''(x)=-\sin x$ より
$M=\max\set{\left|f''(x)\right|}{x\in I}=1$ なので
誤差の最大値は
\begin{align*}
|\Delta|=\left|\frac{f''(x)}2(x-a)^2\right|
\leqq\left|\frac12\kakko{\frac\pi{16}}^2\right|
\lt\frac12\kakko{\frac4{16}}^2
=\frac1{32}
\end{align*}
であることが分かる。
次に $n=3$ の場合を考える。
$$f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2
+\frac{f'''(c)}{3!}(x-a)^3$$
$x-a$ が非常に小さいとき
最後の項は(非常に)$^3$ 小さい。
この項を切り捨て $f(x)$ を
$$f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2$$
で近似する。
これは線型近似より一般的にはよりよい近似になっている。
前に考えた
$f(x)=\sin x$,
$x=\dfrac{5\pi}{16}$,
$a=\dfrac{\pi}4$ で $n=3$ の場合を考える。
近似値および誤差の最大値は
\begin{align*}
\sin\kakko{\frac{5\pi}{16}}
&\fallingdotseq
f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}2(x-a)^2\\
&=\sin\kakko{\frac\pi4}+\cos\kakko{\frac\pi4}\kakko{\frac{5\pi}{16}-\frac\pi4}
-\frac12\sin\kakko{\frac\pi4}\kakko{\frac{5\pi}{16}-\frac\pi4}^2\\
&=\frac1{\sqrt2}+\frac1{\sqrt2}\frac\pi{16}-\frac1{2\sqrt2}\kakko{\frac\pi{16}}^2\\
|\Delta|&=\left|\frac{f'''(c)}{3!}\kakko{x-a}^3\right|
\leqq\frac16\kakko{\frac\pi{16}}^3
\lt\frac16\kakko{\frac4{16}}^3=\frac1{384}
\end{align*}
となる。
関数 $f(x)=f(a+h)$ を
$h$ に関する $n$ 次式 $g(h)$ で近似することを考える。
$d(h)=f(a+h)-g(h),\epsilon(h)=\dfrac{d(h)}{h^n}$ とおく。
$\ds\lim_{h\to0}\epsilon(h)=0$ が成立するとき
$g(h)$ のことを $f(a+h)$ を $x=a$ で近似する$n$次式という。
命題 1.28
$f(x)$ に対し $h$ に関する $n$ 次式
$$g(h)=\sum_{k=0}^n\frac{f^{(k)}(a)}{k!}h^k$$
は $f(a+h)$ を $x=a$ で近似する$n$次式である。
証明
テーラーの定理において $n$ を $n+1$ にして適用する。
$d(h)=f(a+h)-g(h)=\dfrac{f^{(n+1)}(a+\theta h)}{(n+1)!}h^{n+1}$
なので $\epsilon(h)=\dfrac{f^{(n+1)}(a+\theta h)}{(n+1)!}h$
となる。$M=\max\set{|f^{(n+1)}(a+\theta h)|}{0\leq\theta\leq1}$
とおくと
$|\epsilon(h)|\leq\frac M{(n+1)!}|h|$ が成立する。
よって $\ds\lim_{h\to0}\epsilon(h)=0$ が成立する。
$\blackbox$
自然対数の底 $e$ の近似計算をこの方法により考える。
$f(x)=e^x,a=0, x=0+h$ とする。$f'(x)=e^x$ より,
任意の $n$ に対し $f^{(n)}(x)=e^x$ となる。
剰余項 $R_{n+1}$ を切り捨てた近似式を $g_n(x)$
とすると
$$g_n(h)=1+h+\frac{1}{2!}h^2+\cdots+\frac{1}{n!}h^n$$
となる。$a_n=g_n(1)$ が $e$ の近似値を与える。
$n=10$ とすると
\begin{eqnarray*}
a_{10}&=&1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}+\frac{1}{5!}+\frac{1}{6!}
+\frac{1}{7!}+\frac{1}{8!}+\frac{1}{9!}+\frac{1}{10!}\\
&=&2.718281801
\end{eqnarray*}
となる。
$a_{10}$ の誤差 $\Delta$ はテーラーの定理で $n=11$ としたときの剰余項なので
\begin{align*}
|\Delta|&=\left|\frac{f^{(11)}(c)}{11!}(1-0)^{11}\right|
=\frac{e^c}{11!}
\leqq\frac e{11!}\lt \frac 3{11!}\\
&=7.515632515632516\times10^{-8}
\end{align*}
今行った計算は $n$ を決めて誤差を求めた。
次に誤差をある程度以下になるように $n$ を決定することを考える。
$e$ の近似値を $10^{-10}$ 以下の誤差になるように求めたいとする。
剰余項 $R_n$ が誤差になるので
\begin{align*}
|\Delta|&=\left|R_n\right|
=\frac{e^c}{n!}\leq\frac e{n!}<\frac 3{n!}<10^{-10}
\end{align*}
を満たす $n$ を,即ち $n!>3\times10^{10}$ を満たす $n$ を求めればよい。
これを満たす最小の $n$ は
$$14!=87178291200>8.7\times10^{10}>3\times10^{10}$$
より14である。よって
$$a_{13}=2.718281828446759$$
が求めるものになる。
演習問題 1.23
$f(x)=e^x$ を $a=0,n=6$ としてテーラーの定理を用いて表し,その剰余項
$R_6$ を切り捨てることにより
$\dfrac1{\sqrt e}$ の近似値を求めよ。
また誤差を評価せよ。
更に同様な方法で誤差が $10^{-10}$ 以下になるように$n$を決め近似値を求めよ。
計算実行には電卓等を用いてよい$(*1)$。
演習問題 1.24
$f(x)=\cos x$ を $a=0,n=6$ としてテーラーの定理を用いて表し,その剰余項
$R_6$ を切り捨てることにより
$\cos\dfrac\pi{10}$ の近似値を求めよ。
また誤差を評価せよ。
更に同様な方法で誤差が $10^{-10}$ 以下になるように $n$ を決め近似値を求めよ。
計算実行には電卓等を用いてよい。
演習問題 1.25
$f(x)=\log x$ を $a=1,n=6$ としてテーラーの定理を用いて表し,その剰余項
$R_6$ を切り捨てることにより
$\log\dfrac32$ の近似値を求めよ。
また誤差を評価せよ。
更に同様な方法で誤差が $10^{-4}$ 以下になるように $n$ を決め近似値を求めよ。
計算実行には電卓等を用いてよい。
3番目の応用としてTaylor級数展開がある。
関数が何回でも微分可能であり,
テーラーの定理の剰余項
$R_n=\ds\frac{f^{(n)}(c)}{n!}(x-a)^n $が
$\ds\lim_{n\to\infty}R_n=0$ となるとき,関数は
$$f(x)=\sum_{k=0}^\infty \frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k$$
と表すことができる。これを $x=a$ でのテーラー級数と言い,
このとき $f(x)$ は $x=a$ で
テーラー(級数)展開可能であるという。
これから考える $f(x)$ が
テーラー展開可能であることは仮定しておく。
$f(x)=e^x,a=0$とする。
$f^{(n)}(0)=e^0=1$ なのでテーラー級数は
$$e^x=\sum_{k=0}^\infty\frac1{k!}x^k=1+x+\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{3!}x^3+\cdots+
\frac{1}{n!}x^n+\cdots$$
となる。
$f(x)=\sin x$ のときは,
$f'(x)=\cos x$, $f''(x)=-\sin x$,
$f'''(x)=-\cos x$, $f''''(x)=\sin x\ldots$
より,
$f^{(2n-1)}(x)=(-1)^{n-1}\cos x,f^{(2n)}(x)=(-1)^n\sin x$
なので
$f^{(2n-1)}(0)=(-1)^{n-1},f^{(2n)}(0)=0$ である。
テーラー級数は
\begin{align*}
\sin x&=\sum_{k=1}^\infty(-1)^{k-1}\frac1{(2k-1)!}x^{2k-1}\\
&=x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5+\cdots+
(-1)^{n-1}\frac{1}{(2n-1)!}x^{2n-1}+\cdots
\end{align*}
となる。
$f(x)=\cos x$のとき
$f^{(2n-1)}(x)=(-1)^n\sin x,f^{(2n)}(x)=(-1)^n\cos x$
より$f^{(2n-1)}(0)=0,f^{(2n)}(0)=(-1)^n$である。
$\cos x$のテーラー級数は
\begin{align*}
\cos x&=\sum_{k=0}^\infty(-1)^k\frac1{(2k)!}x^{2k}\\
&=1-\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4+\cdots+
(-1)^n\frac{1}{(2n)!}x^{2n}+\cdots
\end{align*}
となる。
演習問題 1.26
次の関数の $x=0$ におけるテーラー級数を求めよ
(テーラー展開可能であることは仮定してよい)。
(1)-(5)のテーラー級数は $-1\lt x\lt1$ の範囲で,
(8)のテーラー級数は $-\dfrac32\lt x\lt \dfrac32$ の範囲で
考える。
なお
実数 $\alpha$ と自然数 $n$ に対し
$$\binom\alpha n=\frac{\alpha(\alpha-1)\cdots(\alpha-n+1)}{n!}\hS(n\geqq1),
\hS\binom\alpha0=1$$
と定義する。これは $\alpha$ が自然数の場合の2項係数の
拡張になっている。
- $f(x)=\log(1+x)$
- $f(x)=\frac{1}{1-x}$
- $f(x)=\sqrt{1+x}$
- $f(x)=\frac{1}{1+x}$
- $f(x)=\frac{1}{1+x^2}$
- $f(x)=e^{2x}$
- $f(x)=\sin3x$
- $f(x)=\log(2x+3)$
演習問題 1.27
次の関数を $x=a$ でテーラー(級数)展開せよ
(テーラー展開可能であることは仮定してよい)。
(3),(8)の級数は $ 0\lt x\lt 2$ の範囲で,
(9)の級数は $0\lt x\lt 4$ の範囲で考える。
- $f(x)=e^x\hS(a=1)$
- $f(x)=\sin x\hS(a=\pi)$
- $f(x)=\log x\hS(a=1)$
- $f(x)=e^{3x}\hS(a=2)$
- $f(x)=x^5\hS(a=1)$
- $f(x)=\sin x\hS\kakko{a=\frac\pi2}$
- $f(x)=\cos2x\hS\kakko{a=\frac\pi2}$
- $f(x)=x^2\log x \hS (a=1)$
- $f(x)=x^3\log x \hS (a=2)$
演習問題で $x$ の範囲を限定してある問題があったが,
これについて簡単に説明しておく。
関数 $y=f(x)$ を $x=a$ のまわりでテーラー展開して
$$f(x)=\sum_{k=0}^\infty\frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k$$
としたとき,( $x=a$ のまわりでテーラー展開可能は仮定しているので)
$x$ が $a$ の近くにあるときは級数の収束は保証されているが,
$a$ から離れると収束しない場合もある。
例えば級数
$$\frac1{1-x}=1+x+x^2+x^3+\cdots+x^n+\cdots$$
を考える。今の場合 $0$ の近くでは収束するが(実際 $|x|\lt 1$ なら収束),
$|x|\gt 1$ のときは収束しない。
一般のテーラー級数に関しては,すべての実数で収束するかまたは,
ある正の実数 $R$ が存在して
$|x-a|\lt R$ で収束し,$|x-a|\gt R$ で収束しないことが知られている。
この様な $R$ を級数の収束半径と呼ぶ。
すべての実数で収束する場合収束半径を $R=\infty$ と考えると,
テーラー級数に対し収束半径が定義される。
$e^x$ の級数展開の
$x$に形式的に$ix$ ($i$ は虚数単位即ち $\sqrt{-1}$)
を代入することにより,オイラーは次のオイラーの公式を導いた。
\begin{align*}
e^{ix}&=\sum_{k=0}^\infty\frac1{k!}(ix)^k
=\sum_{k=0}^\infty\frac1{(2k)!}(ix)^{2k}+\sum_{k=0}^\infty\frac1{(2k+1)!}(ix)^{2k+1}\\
&=\sum_{k=0}^\infty\frac{i^{2k}}{(2k)!}x^{2k}+\sum_{k=0}^\infty\frac{i\cdot i^{2k}}{(2k+1)!}x^{2k+1}\\
&=\sum_{k=0}^\infty(-1)^k\frac1{(2k)!}x^{2k}+i\sum_{k=0}^\infty(-1)^k\frac1{(2k+1)!}x^{2k+1}\\
&=\cos x+i\sin x
\end{align*}
オイラーの公式と指数法則を知っていれば3角関数の加法定理は
自然に出て来る。オイラーの公式より
$e^{ix}=\cos x+i\sin x$,
$e^{iy}=\cos y+i\sin y$,
$e^{i(x+y)}=\cos(x+y)+i\sin(x+y)$を得る。
$e^{i(x+y)}=e^{ix}e^{iy}$なので,
\begin{eqnarray*}
\cos(x+y)+i\sin(x+y)&=&
(\cos x+i\sin x)(\cos y+i\sin y)\\
&=&(\cos x\cos y-\sin x\sin y)+i(\sin x\cos y+\cos x\sin y)
\end{eqnarray*}
この式の実部同士,虚部同士を比較すると加法定理が得られる。
演習問題 1.28[*]
次を示せ。$1\leqq p\leqq n$を満たす実数 $p$ に対し
\begin{align*}
f(x)&=\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k
+\frac{(1-\theta)^{n-p}f^{(n)}(a+\theta(x-a))}{p(n-1)!}(x-a)^n
\end{align*}
を満たす $\theta\hs (0\lt\theta\lt 1$) が存在する。
$$R_n=\frac{(1-\theta)^{n-p}f^{(n)}(a+\theta(x-a))}{p(n-1)!}(x-a)^n$$
をロシュの剰余項と呼ぶ。
$p=n$ とすると定理 1.25 の剰余項になる。
これをラグランジェの剰余項という。
$p=1$ としたものをコーシーの剰余項と呼ぶ。
演習問題[*]1.29
次の関数がテーラー級数展開可能であること,
即ち剰余項 $R_n$ に対し $\limn R_n=0$ が成立することを示せ。
最初の3つの式は任意の $x$ について成立するが,最後の2つには制限がつく。
\begin{align*}
e^x&=\sum_{k=0}^\infty\frac1{k!}x^k\\
% &=1+x+\frac12x^2+\frac1{3!}x^3+\cdots+\frac1{k!}x^k+\cdots\\
\sin x&=\sum_{k=0}^\infty(-1)^k\frac1{(2k+1)!}x^{2k+1}\\
% &=x-\frac1{3!}x^3+\cdots+(-1)^k\frac1{(2k+1)!}x^{2k+1}+\cdots\\
\cos x&=\sum_{k=0}^\infty(-1)^k\frac1{(2k)!}x^{2k}\\
% &=1-\frac1{2!}x^2+\cdots+(-1)^k\frac1{(2k)!}x^{2k}+\cdots\\
\log(1+x)&=\sum_{k=1}^\infty(-1)^{k-1}\frac1k x^k
% =x-\frac12x^2+\frac13x^3+\cdots+(-1)^{k-1}\frac1k x^k+\cdots
\hS(-1\lt x\lt 1)\\
\big(1+x)^\alpha&=\sum_{k=0}^{\infty}\binom\alpha kx^k
% =1+\frac\alpha1x+\frac{\alpha(\alpha-1)}{2!}x^2+\cdots+\binom\alpha kx^k+\cdots
\hS(-1\lt x\lt 1)
\end{align*}
演習問題[*] 1.30
次の関数は何回でも微分可能であるが,$x=0$
でテーラー級数展開可能でないことを次にしたがって示せ。
$$f(x)=\left\{\begin{array}{ll}
e^{-\frac1x}\hS&(x\gt0)\\
0&(x\leqq0)
\end{array}
\right.$$
- $g(t)$ を $n$ 次の多項式とするとき
$\ds\lim_{t\to\infty}\frac{g(t)}{e^t}=0$
が成立することを $n$ に関する数学的帰納法で示せ( $n=0$ から始めること)。
- $f^{(n)}(x)$ はある多項式 $P_n(t)$ を用いて
$$f^{(n)}(x)=\left\{\begin{array}{ll}
P_n\kakko{\dfrac1x}e^{-\frac1x}\hS&(x\gt0)\\
0&(x\leq0)
\end{array}
\right.$$
と表されることを $n$ に関する数学的帰納法で示せ ($n=0$ から始めること)。
- $f(x)$ が $x=0$ でテーラー級数展開可能だと仮定すると矛盾することを示せ。
$(*1)$
厳密には電卓の計算誤差も考慮する必要がある。
10桁程度なので電卓等の誤差は無視することにする。
Last modified: 2026/09/21 21:35