(3.4) 微分方程式とは
$\boxed{現象}\mapto
\boxed{モデル化}\mapto
\boxed{微分方程式を立てる}\mapto
\boxed{微分方程式を解く}\mapto
\boxed{現象を理解する}$
上は微分方程式を用いた現象の解析を図式にしたものである。この方法は発見以
来350年ほどたつが,その威力は依然として大きい。
図式では「解く」と書いてあるが
「解けない」場合に数値計算$(*1)$
等を行うことも含めて考えている。
物理学等ですでに扱っているとは思うが,
「微分方程式はどんなものか」という説明から始める。
バネによる運動を例に考える。
バネに働く力を分析したところ,バネを伸ばしたり縮めたりしたとき働く力は
バネの自然な長さからのずれの長さに比例することが分かったとする。
バネにつながれた質量 $m$ の物体(質点と考える)が $x$ 軸上を運動している。
時刻 $t$ における質点の $x$ 座標を $x=x(t)$ とする。
物体には原点からの距離に比例する原点向きの力
$F=-kx$ が働いている(フックの法則)。
ニュートンの運動方程式 $F=m\alpha\hS(\alpha$は加速度) より $x$ は
\begin{align}\label{bibun_rei}
-kx=m\dfrac {d^2x}{dt^2}
\end{align}
を満たす。
この様にある関数とその導関数及び高次導関数の間に成立する式を微分方程式という。
微分方程式(\ref{bibun_rei})を作った段階では,
この微分方程式を満たす関数がどのような関数かは知られていないことに注意すること。
微分方程式 (\ref{bibun_rei}) からこの微分方程式を満たす関数
(微分方程式の解と呼ばれる) を求めることを「微分方程式を解く」という。
微分方程式 (\ref{bibun_rei}) を満たす関数(微分方程式の解と呼ばれる)は,すべて
$$x(t)=C_1\sin(\omega t+C_2)$$
(ただし $\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}}$ とする)
という形をしていることが知られている。
このことは後で導くが今は証明なしに認めておこう。
以上のことから微分方程式 (\ref{bibun_rei}) を満たす関数は単振動であることが分かる。
微分方程式はこのようにして動的なものの解析に大きな威力を発揮してきた。
ここで一般的に微分方程式を定義しておこう。
前の例は独立変数が $t$,従属変数が $x$ であったが,
ここでは独立変数 $x$,従属変数 $y$ としよう
$(*2)$。
$n$を自然数とする。$n+2$ 変数関数 $F(x,Y_0,Y_1,\ldots,Y_n)$
$(*3)$
が与えられているとする。このとき
$$F(x,y,y',\ldots,y^{(n)})=0\hS(*)$$
を $n$ 階の微分方程式(differential equation)と呼び,
関数 $y$ で ($*$) を満たすものを微分方程式の解(solution)という。
すべての解を表示している解(一般に任意定数を $n$ 個含む解)を
一般解(general solution)といい,
ある初期条件(と呼ばれるある条件)を満たす解を
特殊解(particular solution)という。
「微分方程式を解く」とは,与えられた微分方程式の一般解を求めること,
または初期条件が与えられているときは特殊解を求めることをいう。
微分方程式(\ref{bibun_rei})の例では (独立変数を $t$ とする),
$F(t,X_0,X_1,X_2)=mX_2+kX_0$ とおけばよい。
この場合2階の微分方程式である。
$$x(t)=C_1\sin(\omega t+C_2)$$が
一般解であり,
例えば$x(0)=0,\dfrac{dx}{dt}(0)=v_0$ という初期条件の下で
$x(t)=\dfrac{v_0}{\omega}\sin\omega t$ が特殊解である。
微分方程式を解くことを学ぶ前に,
与えられた条件から微分方程式を導出することを考えよう。
このことを「微分方程式を立てる」という。
平面内に曲線 $y=f(x)$ がある。
この曲線上の任意の点における法線(接線と直交する曲線)が原点を通るとする。
このとき曲線が満たすべき微分方程式を立てよう。
曲線上の点の座標を $(x,y)$ とする。
この点における接線の傾きは
$y'=\dfrac{d y}{dx}$ である。
法線は接線と直交するので傾きは $-\dfrac{1}{y'}$
である。法線上の点の座標を $(X,Y)$ とすると法線の方程式は
$$Y=-\dfrac{1}{y'}(X-x)+y$$
となる。
この直線は原点 $(0,0)$ を通るので
$0=-\dfrac{1}{y'}(0-x)+y$,即ち
$$yy'+x=0$$
を得る。次節でこの微分方程式を解く。
演習問題 3.11
次の場合に微分方程式を立てよ。
- 曲線 $y=f(x)$ 上の点を $P$ とする。
$P$ における法線が $x$ 軸と交わる点を $N$,
$P$を $x$ 軸へ正射影した点を$Q$とすると線分 $QN$ の長さが常に一 定である。
- 曲線 $y=f(x)$ 上の点を $P$ とする。$P$ における接線が $x$ 軸と交わる点を
$S$,$y$ 軸と交わる点を $T$ とすると点 $P$ は線分 $ST$ の中点である。
- 空気中を落下する物体に働く空気の抵抗は速度の2乗に比例する。
比例定数 を $k$,重力定数を $g$ とする。
速度を $v$ とするとき $v$ が満たすべき微分方程 式を求めよ。
(3.5) 変数分離型
最も簡単な微分方程式は $\dfrac{dy}{dx}=f(x)$ であろう。
これは微分方程式というより積分計算である。
$f(x)$ の不定積分が求まれば,$y=\int f(x)dx$ と求まる。
次に簡単なタイプが $\dfrac{dy}{dx}=\lambda y$ ($\lambda$は定数) であろう。
これに関しては次が成立する。
命題 3.9
微分方程式$\dfrac{dy}{dx}=\lambda y$ の一般解は$y=Ce^{\lambda x}$ である。
証明
恒等的に $0$ となる関数 $y\equiv 0$ は解になっている。
よって $y\not\equiv 0$ とする。
ある点 $x$ で $0$ ではないので $y$ で両辺を割ると
$\dfrac{1}{y}\dfrac{dy}{dx}=\lambda$ が得られる。両辺を $x$ で積分すると
$$\int\dfrac{1}{y}dy=
\int\dfrac{1}{y}\dfrac{dy}{dx}dx=\int\lambda dx$$
となる。$\int\dlfrac{1}{y}dy=\log|y|$, $\int\lambda dx=\lambda x+C_1$な
ので,$|y|=e^{\lambda x+C_1}=e^{C_1}e^{\lambda x}$を得る。よって$C=\pm
e^{C_1}$とおくと,$y=Ce^{\lambda x}$となる。この式は最初の$y\equiv0$の場
合も含んでいるので,一般解が\hbox{得られた。\bbox}
\vs
命題\ref{prop_diff_eq_kihon}の証明方法を一般化すると,微分方程式の解を求
める方法として\defj{変数分離型}と呼ばれるものが得られる。
$$\bibun{y}{x}=f(x)g(y)$$
の形の微分方程式を変数分離型の微分方程式と呼ぶ。
$\dlfrac{1}{g(y)}dy=f(x)dx$と変形すると
\footnote{「$\bibun yx$は分数ではない」という立場からすると,
この方法は正しくないように見えるが,
これをきちんとした数学的枠組みで議論する方法も知られているし,
微分方程式を解くときによく用いられるので紹介しておく。},
$$\int\dlfrac{1}{g(y)}dy=\int f(x)dx$$
が得られる。この積分が計算できれば$y$を含む式が得られ,$y$について解けれ
ば解が得られる。
例えば$\bibun{y}{x}=2xy$を考える。$\dlfrac{1}{y}dy=2xdx$より
$\int\dlfrac{1}{y}dy=\int 2xdx$, $\log|y|=x^2+C$となり,
$y=Ce^{x^2}=C\exp\left(x^2\right)$%
%\footnote{$\exp\left(f(x)\right)=e^{f(x)}$である。$f(x)$が複雑な式の場合,
%指数の肩に複雑な式があるのは見にくいので,この様な表記を用いることがある。}
%\kg
を得る。
%%------------------
\演習問題
次の微分方程式を解け。
\begin{prob}[1]
\item $yy'+x=0$
\item 演習問題\ref{en_make_diff_eq}
(1)で得られた微分方程式
\item 演習問題\ref{en_make_diff_eq}
(2)で得られた微分方程式
\item 演習問題\ref{en_make_diff_eq}
(3)で得られた微分方程式
\end{prob}\kg
今まで微分方程式に対して解は存在することを前提にした議論をしてきた。しかし,
微分方程式が与えられたとき,その解はいつでも存在するのだろうか。偏微分方程
式も含めるとそれは正しくないことが知られている。次の定理は(常)微分方程式の
解の存在と一意性を保証するものである。証明抜きで紹介しておく。微分方程式
が$\bibun[n]{y}{x}=f(x,y,y'\ldots,y^{(n-1)})$の形をしているとき
\defj{正規型}という。
%-----------------------------
\begin{thm}{[\gt 微分方程式の解の存在と一意性]}\label{thm_diff_eq}
$f(x,Y_0,Y_1,\ldots,Y_{n-1})$はある領域$R$で$C^1$級(導関数が連続)とする。
$R$内の点$(a_0,b_0,b_1,\ldots,b_{n-1})$を1つ指定する。このとき微分方程
式
$$\bibun[n]{y}{x}=f(x,y,y',\ldots,y^{(n-1)})$$
の解で$y(a_0)=b_0,y'(a_0)=b_1,\ldots,y^{(n-1)}(a_0)=b_{n-1}$
を満たすものが唯1つ存在する。
\end{thm}
$(*1)$
この講義では微分方程式の解の近似計算は行わない。
$(*2)$
独立変数が2つ以上ある多変数関数に関する微分方程式(偏微分方程式と呼ばれる)もあるが,ここでは扱わない。偏微分方程式も扱う立場では,
我々が微分方程式と呼んでいるものを常微分方程式と呼ぶ。
$(*3)$
$F$が$Y_n$に依存しないとき,
即ち$Y_n$が変化しても$F$が変化しない場合を除く。
Last modified: 2026/09/23 23:49