大変よい質問で、感心しました。

>ベクトル空間と(そのベクトル空間における)部分空間に次元の違いが生じてくるのは何故でしょうか。

 一点は0次元、直線は1次元、平面は2次元、空間は3次元......というのを認めるとすれば、例えばxyz空間(3次元!)の中の原点を通る平面は2次元部分空間であることは認められるのではないでしょうか? 御質問の意図は、多分、「xyz空間の中の平面だって3次元の中にあるのだから3次元じゃないのか」というようなことではないかと思いますが、平面の中に住んでいる平面人がいて、平面の外のことを認識できないとすれば、この世は2次元に決まっている、と思うのではないでしょうか。或いは、例えば、ベクトル(1,1,1)とベクトル(1,1,-1)を基底とするxyz空間の部分空間(これは幾何学的には、原点を通り(1,1,1)と(1,1,-1)に平行な平面のことですが)は2次元だと言うが、(1,1,1)も(1,1,-1)も3次元ベクトルではないか、というような疑問かもしれませんが、それは本質的に上の疑問と同じです。原点から(1,1,1)の方向と(1,1,-1)の方向とに新しく座標軸を設定し、2つの自由度を持つ世界を考えよう、という訳です。

>講義の中で「次元とはパラメタの個数」とおっしゃっていましたが、それは何故なんですか

 (1,1,1),(1,1,-1)を基底とする部分空間に属する点(x,y,z)の全体は、(x,y,z)=s(1,1,1)+t(1,1,-1)或いはx=s+t,y=s+t,z=s-tとパラメタ表示されます。(s及びtはパラメタ。)平面、或いは一般に部分空間をパラメタ表示するときのパラメタは新しい座標とも思えるので、パラメタの個数は座標軸の本数、即ち次元であると考えられます。

>また、四次元、五次元、六次元…とは具体的には、どのような空間を表わしているのでしょうか。

 君は自分が3次元空間に住んでいると思っているかも知れませんが、空間の3次元の他に時間も入れれば4次元ですよね。空間と時間は違う、と言うかも知れませんが、特殊相対性理論によれば、相対速度が光速に近い二つの座標系の間の変換の式は時間と空間が入り交じった形になります。言い換えると、君から見て光速に近いスピードで運動している人から見ると、君にとっての時間はその人にとっては時間と空間が入り交じったものに見え、君にとっての空間もその人にとっては時間と空間が入り交じったものに見えると言うことです。従って、相対論も考慮に入れるときは、この世は空間と時間を切り離して3次元空間+時間と考えたままではどうしても記述できなくて、4次元時空と考えなければならない。普通の人間が3次元的な感じ方しか出来ないのは光速に近いような運動に慣れていないからだと思います。
 更に、最近の素粒子論によれば、4次元時空の一点一点には内部自由度というものがあり、それがその点における電磁場(光子といっても同じことですが)とか、その他の素粒子とかを記述している、ということがあり、その自由度も合わせると宇宙は10次元だとか26次元だとか考えられる(何次元と考えるべきかはまだ確定した訳ではないと思います)のだそうです。内部自由度の空間的な広がりは、プランク定数の大きさに近いような微小な広がりなので、矢張り人間には直接認識することが出来ないようになっていると考えられます。
 以上のような例は、「具体的な空間」という時に君が想定していることに近いと思われるので、真っ先に挙げてみましたが、数学的には、そのような物理的な「空間」も、与えられた連立1次方程式の解全体のなすアファイン部分空間も同じ意味で空間だと考えるべきなのだと思います。そのときに、次元とは、自由度の数であり、パラメタの個数であり、座標軸の本数なのです。
今度是非、情報棟5階の「情報数理計算機室」(実態は気楽な談話室)に遊びに来てそこにいる任意の数学者、または物理学者に質問してみてください。